【質問の要旨】
・被相続人:父(R4.11.30死亡)
・相続人:妻、実子4人(うち1人が相談者)、養子2人
・相談者の父母は離婚している(父は再婚)
・現在の妻が、司法書士に遺産分割を依頼し、相談者に通知文が届いた
(中身は、通帳・不動産・戸籍のコピー)
・父が死亡する2ヶ月前に現在の妻に不動産を一部贈与し、婚姻をしている
・父は、R3.10.22に重度の脳梗塞で入院しており、婚姻が自分の意思か不明
<相談者の意向>
・父の婚姻、贈与が高齢者を騙した詐欺事件なら解明したい
・遺産相続に関係がある資産を調査したい
・弁護士に依頼した場合の費用を知りたい
【回答】
1 刑事事件に該当するかどうかの調査
婚姻届や不動産贈与証書のコピーが入手できるのであれば、それらに記載された被相続人の筆跡が本人のものであるかを調査すべきです。
もし、明らかに被相続人の筆跡とは異なる場合は、私文書偽造や公正証書不実記載という罪に該当する可能性があります。
又、全体として詐欺罪等、もっと重大な犯罪に該当する可能性もあります。
そのため警察に相談されるとよいでしょう。
2 遺産の範囲
(1)遺産に含まれる財産は何か
被相続人が死亡時に保有していた不動産や預貯金や株式は遺産に含まれます。
この他、令和4年9月に、被相続人から妻に対してなされた贈与が無効なら、その不動産も遺産に含まれます。
この他、もし生前に妻が被相続人に無断で引き出した預貯金等があればそれも遺産になります。
(2)婚前贈与不動産が遺産に含まれるケースについて
贈与証書や婚姻届の筆跡が被相続人の筆跡である場合であっても、不動産の婚前贈与や婚姻をした当時、被相続人が贈与や婚姻という行為の意味が分からない状態であった場合(この状態を《意思無能力》といいます)、婚前贈与や婚姻は無効になります。
その場合、婚前贈与不動産は被相続人の遺産に含まれることになりますし、妻も、本当は妻ではなく、相続人ではないということになります。
3 意思能力の有無の調査方法
意思能力の有無に関する資料として、認知機能検査(長谷川式認知症スケールやMMSE等)の結果や、診断書、カルテ、リハビリ病院の介護記録、介護認定資料等により判断ができますので、これらを収集されるとよいでしょう。
4 弁護士費用
弁護士には事件を依頼するときの着手金と事件終了時の報酬の支払が必要ですが、これらの計算方法は事務所により異なります。
又、請求し、かつ取得した金額によっても異なってきます。
標準的なところでは次のような計算方法をする事務所が多いでしょう。
請求し、取得する金額が300万円から3000万円の範囲の場合
・着手金 《請求金額》×5 %+9万円
・報酬金 《取得額》×10 %+18万円
たとえば、1000万円の金銭を相手方から取得した場合、
着手金・・・59万円
報酬・・・・118万円
となります。
ただし、当初に支払う着手金を軽減する事務所もありますし、
上記と異なる報酬基準を採用している事務所もあります。
【題名】
重度の脳梗塞の父が自宅療養中に婚姻していた
【ご質問内容】
母の別れた夫(実父)が茨城県でR4.11.30に亡くなったので相続の発生で遺産分割をしてほしいと7月20日郵便で届きました。
死亡2ヶ月前に婚姻した現在の妻(●●人。※外国籍)が東京の司法書士に遺産分割を依頼したらしく、相続人が妻、子供が実子4人、養子2人で、合計7人でした。
(戸籍謄本あり)
簡単な目録として、実父の銀行通帳の亡くなった時の最後のページのコピー3行分と数件の不動産の書類のコピーと戸籍のコピーが同梱されてました。
司法書士の調べた内容によると遺言書はないようです。(実際はわかりません)負債はなく、預貯金と会社、個人の不動産についてでした。
しかも、最初は会社の中身などは一切しらせてきませんでした。
1月中には戸籍を取り寄せ相続人は判明していたが、通知は半年以上経過して隠ぺいの可能性があり
なぜか入籍する3日前に1件の不動産を現在の妻に贈与している
婚姻はR4.9.30でした。(自宅療養中)
いろいろ自分で調べていったところ、重度の脳梗塞で、R3.10.22に緊急入院し翌年3月退院と同時にリハビリ病院に移動し、5月に嚥下症状があり、胃ろう処置をしていました。9月14日退院(自分の意思かは不明)そのまま自宅療養していたが、面倒が見切れないので10月20日施設に入院させてその後亡くなる。
入院手続きも妻と名乗り入院手続きをしていました。
ほとんど病院に入院している状態でした。
自宅療養も普通なら難しい状況のはずでしたが、なぜか自宅療養になり、その期間に贈与、婚姻しています。
高年齢で資産があり死亡2ヶ月前に●●人(※外国人)に贈与に婚姻など、重度の脳梗塞
で本人の意思なのか疑問です。
また、父と一緒に資産管理をしていた方がいると聞き、●●にある株式会社●●の●●と名乗っていますが、会う事も直接 話しを聞く事もできません。
連絡先すら教えてもらえないのです。
父に●●人(※外国人)を紹介した人がいたそうです。妻は何度聞いても、いつから家にいるのかを聞いても答えてくれません。手紙で説明しますと言い誰かの指示を待っているような、感じでした。
父の会社や個人の土地、贈与した土地も、私達からしたらなぞの投資家?の支持だと司法書士から聞きました。司法書士に問い合わせしても答えてはくれません。
もしも全てが計画された詐欺事件だったとしたら解明したい思いです。
上記をどんな手順調べ、どこまでが遺産相続に関係がある資産なのか?もしも依頼した場合、項目毎の料金などを知りたい。
【ニックネーム】
ゆーさん
【詳細な回答】
1 刑事事件に該当するかどうかの調査
被相続人が記載した婚姻届のコピーを市役所から入手できるのであれば(写真撮影でも可)、その婚姻届における被相続人の筆跡が本人のものであるかを確認する方法が考えられます。
また、被相続人から妻に不動産が贈与され、登記もされているようですが、登記の際に、被相続人が署名・捺印をした贈与証書等が法務局に提出されていると考えられます。
その贈与証書等のコピーを法務局から入手できるのであれば(写真撮影でも可)、その贈与証書における被相続人の筆跡が本人のものであるかを確認する方法も考えられます。
明らかに被相続人の筆跡とは異なる場合は、有印私文書偽造罪・同行使罪、公正証書原本等不実記載罪等に該当する可能性があります。
この場合には、警察に相談するとよいでしょう。
2 遺産の範囲
(1)遺産に含まれる財産は何か
被相続人が死亡時に保有していた預貯金や株式は、遺産に含まれます。
被相続人が死亡時に所有していた不動産も遺産に含まれますが、問題は、令和4年9月27日に、被相続人から妻に対してなされた贈与不動産が遺産に含まれるか否かです。
(2)婚前贈与不動産が遺産に含まれるケースについて
贈与証書や婚姻届の筆跡が被相続人の筆跡である場合であっても、不動産の婚前贈与や婚姻をした当時、被相続人が贈与や婚姻という行為の意味が分からない状態であった場合(この状態を意思無能力といいます)、婚前贈与や婚姻は無効になります。
その場合、婚前贈与不動産は被相続人の遺産に含まれることになりますし、妻も、本当は妻ではなく、相続人ではないということになります。
問題は、それらの行為当時、被相続人に意思能力がなかったといえるかです。
なお、意思能力がなかったことについては、相談者が立証する必要があります。
3 遺産の範囲の調査方法
意思能力があるかどうかは、明確な判断基準があるわけではなく、最終的には裁判所が判断します。
意思能力の有無に関わる資料を収集し、意思能力が疑われるものが見つかれば、遺産分割の協議や調停の際に、それらの資料を提示しつつ、意思能力がないと主張するのがよいでしょう。
資料としては、認知機能検査(長谷川式認知症スケールやMMSE等)の所見や、診断書、カルテ、リハビリ病院の職員による記録等が考えられます。これらを収集するとよいでしょう。
4 遺産の取り分について
婚姻等の当時、被相続人の意思能力がないとまでは言えなかった場合であっても、婚前に妻に贈与した財産が生計の資本としての贈与にあたる可能性は高いと思われます。
その場合、贈与不動産は特別受益であるとして、妻の相続による取り分が少なくなり、他の相続人の取り分が増えます。
5 遺言書の調査方法
遺言公正証書の有無は、全国の公証役場にて調査することができます。
6 弁護士費用
弁護士費用は法律事務所によって異なりますので、ご依頼を検討される弁護士にお尋ね下さい。
ご参考までに、当事務所では、遺産調査だけを受任することはしておりません。
本件遺産分割調停事件全体(遺産調査を含む)を受任する場合、遺産総額×相談者の相続分を下表の「経済的利益の額」として、下表の着手金と報酬金が、弁護士費用の目安となります(事件の難易度により、増減があります)。
(弁護士 武田和也)
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