【質問の要旨】
・母に姉と妹がいる
・祖母は他界していて配偶者がいない
・その場合、娘3人で等分のはず
・しかし次女である母はすでに他界しており、その子供である私と兄弟には一切の権利がないと言われた
・祖母が生前口約束で財産を譲ると言っていたので、母の妹は婿養子を迎え、名前を継いだので全て自分たちのものだという
・遺産放棄の書類を要求されるが一切承諾はしていない
・裁判すると言ってくる
・明確な遺産金額の開示をしてほしい
・何も貰わず書類を渡すことなどはあるのか
【回答の要旨】
・第1 相続関係について
1 祖母が亡くなった時点で、相談者の母が既に亡くなっていた場合
・亡くなられた相談者の母の代わりに相続をすることになります。
2 祖母が亡くなった後で、相談者の母が亡くなった場合
・母の相続を通して、祖母の遺産を相続する権利がある
3 母の妹の主張について
・相談者らに「一切権利がない」ことを前提とした要求については応じる必要がない
第2 母の妹の要求への対応
1 まずは祖母の生前の口約束については、裏付け資料を要求しましょう
2 相手方から裏付け資料が出てきた場合
・相手方の受けた生前贈与等は祖母の相続について特別受益に該当する可能性がある
3 遺産分割調停について
・相談者自身が合意をしない限り、一方的に調停が成立することはない
【題名】
祖母の遺産相続の権利について
【ご質問内容】
母に姉と妹がおります。祖母が亡くなって配偶者が居ない場合、娘3人で等分かと思うのですが、
次女である母はすでに他界しておりその子供達である私と兄弟には一切権利がないと言われました。
母の妹は名前を継ぎ婿養子を迎えたので全て自分達のものだと言います。祖母が生前口約束で財産を譲ると言ったからからだそうです。
遺産放棄の書類を要求されますが一切承諾した覚えがありません。母の妹が相続するのに反対している訳でもないのに裁判にするからと言ってきました。
私としては明確な遺産金額の開示をしてもらいハンコ代の金額提示をしてもらいたいのですが何も貰わず書類を渡す事などあるのでしょうか?
(おーにゃん)
※敬称略とさせていただきます。
【回答】
第1 相続関係について
1 祖母が亡くなった時点で、相談者の母が既に亡くなっていた場合
今回のケースでは、被相続人が祖母で、その娘が3人ということですので、本来は祖母の娘3人がそれぞれ3分の1ずつ相続することになります。
仮に、相談者の母である次女について、祖母が亡くなった時点で既に亡くなっていたというのであれば、次女の子供である相談者とその兄弟ら(以下、「相談者ら」といいます)が、亡くなられた相談者の母の代わりに相続をすることになります。(これを《代襲相続》といいます。)
2 祖母が亡くなった後で、相談者の母が亡くなった場合
仮に、祖母が亡くなった後で、相談者の母が亡くなったというような場合は、祖母の相続については、相談者の母が3分の1を相続していることになります。
そして、その後、相談者の母が亡くなった時点で、相談者らが母の相続をしているということになります。(これを《数次相続》といいます)
この場合、相談者らは、母の相続を通して、祖母の遺産を相続する権利があるということになります。
3 母の妹の主張について
今回、相談者らは母の妹から相続について「一切権利がない」と言われています。しかし、上記のとおり、相談者らは代襲相続、あるいは数次相続することができます。
そのため、母の妹からの、相談者らに「一切権利がない」ことを前提とした要求については応じる必要がないということになります。
第2 母の妹の要求への対応
1 まずは祖母の生前の口約束については、裏付け資料を要求しましょう
今回、相談者の母の妹は、祖母から口約束で全財産を譲ると言われたことを理由として、相談者らに遺産の放棄を要求しています。
この「遺産の放棄」というのはいろんな意味で使用されます。
法律上、「相続放棄」あるいは「相続分譲渡」である他、遺産分割の中で遺産を受け取らない合意をすることなどを指している可能性があります。
いずれにしろ、相手方の主張する全財産を譲渡したという点については、生前の口約束であり、今のところ、何ら裏付け資料がない状態ですので、まずは相手方に裏付け資料を出すように主張するのがよいでしょう。
2 相手方から裏付け資料が出てきた場合
相手方から、祖母の生前の口約束について、贈与契約書などの裏付け資料などが提出された場合、相手方の受けた生前贈与等は祖母の相続について特別受益に該当する可能性があります。
その場合、贈与分については、祖母の遺産に持ち戻した上で、分けることになるので、相談者らとしても弁護士に依頼するなどしてきちんと争った方が良いものと思われます。
3 遺産分割調停について
今回のケースでは母の妹が裁判をすると言っていますが、これは遺産分割調停の申立てをするということと思われます。
遺産分割調停は相続人間の話し合いでの解決を目的とするものですので、相談者自身が合意をしない限り、一方的に調停が成立することはありません。
相手方としては、裁判という煩雑な手続きが必要になることをちらつかせることで、相談者が相続放棄等の遺産放棄に応じるよう心理的圧力をかけているものと思われます。
ただし、もし相手方が実際に調停を起こして来た場合は相談者らとしても、弁護士に依頼して対応する必要があります。
(弁護士 山本こずえ)