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実例Q&A

定期貯金の無断解約と刑事責任・民事責任【Q&A771】

2022年7月28日

【質問の要旨】

・昨年の11月に母が死去

・相続人は兄、相談者、弟の3人

・8年前に同居の兄が母の口座から約900万円を引出し

・そのうちの500万円で未成年の兄の娘(姪)名義で定期預金を作成

・定期預金の通帳は母が持っていた

・その後、母に依頼された相談者が定期預金を解約、相談者が署名をした

・姪の口座を勝手に解約したため、刑事罰を受けるのが怖く、時効が成立する7年間

 遺留分侵害額請求をためらっていた

 

①時効成立後に遺留分侵害額請求を行った場合、兄もしくは姪から500万円の損害賠償は請求されるか

②その場合500万円が請求か。母の口座に入金してるから問題ないのか

 

 

 

【回答の要旨】

・刑事責任については、公訴時効が完成しているため、心配しなくてよい

・姪名義の定期貯金の無断解約行為に関して、相談者は姪に対し500万円の損害賠償責任を負っている

・遺留分侵害額請求をするとよい

昨年の11月に母が亡くなりました。

公正証書の遺言書で全財産を兄に譲るとありました。

 

8年前に同居の兄が、母の郵貯銀行口座から約900万円を引き落としました。

母の同意を得ていたかはわかりませんが、母を連れて郵貯銀行に行きました。

当時の郵貯銀行の預け入れ限度額が1000万円だった為、郵貯銀行の方がこれ以上の金額の預け入れが出来ないから、お子さんやお孫さん名義にしたらと言われて兄が引き落としの手続きしたようです。

900万円のうち400万円が何に使われたかはわかりませんが、兄が取ったと母は言いました。

また、900万円のうち500万円を同居の未成年の兄の娘<姪>名義で郵貯銀行の定期預金を作成しました。

母は納得出来なかったけど、同居もしているので喧嘩もしたくないのでそのまま姪の口座が作成されたままにしたそうです。

姪は知らないはずです。

又、この定期預金の通帳は、兄が母に預けたそうで、母が持っていました。

その後、母は郵貯銀行の預金を減らしたくなかったため、母が娘で有る私を連れて郵貯銀行に解約を依頼しました。

その際、母に替わり私が署名をし解約を行い、母の口座に入金しました。

※兄が引き落とした際と私が入金した際の証拠書写し請求書で筆跡は確認済み。

 

同居をしてない私が、姪の口座を勝手に解約してしまった為刑事罰を受けるのが恐く7年の公訴時効が成立するまで、

遺留分侵害額請求をためらいました。

7年が経たのでこれからの遺留分侵害額請求を行った場合、兄若しくは姪から500万円の損害賠償はされますか?その場合は500万円が請求ですか?それとも母の口座に入金しているので問題は無いのでしょうか。

 

相続人は兄と私と弟の3人です。

 

刑事罰を考慮して遺留分侵害額請求はしない方が宜しいでしょうか。

どうぞよろしくお願いします。

【ニックネーム】

後悔

 

【回答】

1 前提として

2014年(8年前)に、兄が、母を郵貯銀行に連れていき、一応母の承諾を得て、出金伝票に署名をした上で、母の貯金口座から900万円を出金し、うち500万円を、姪に黙って、姪名義の定期貯金にしたものとします。

その後、母から依頼を受けた相談者が、姪の名で署名して定期貯金を解約し、母の貯金口座に送金したものとします。

母の相続開始時に、母は預貯金は1500万円あり、他に不動産等は有していなかったものとします。

 

2 刑事責任について

相談者が、姪に無断で、姪の定期貯金を解約した行為は、詐欺罪に該当すると考えられます。

また、相談者が、解約や送金の際に、必要書類に姪の署名を偽造した行為と、それらの書類を郵貯銀行に提示した行為は、有印私文書偽造罪および同行使罪に該当すると考えられます。

ただし、詐欺罪の公訴時効は7年であり、有印私文書偽造罪および同行使罪の公訴時効は5年ですので、本件では、公訴時効が既に完成しているものと思われます。刑事責任を負うことはないでしょう。

 

3 姪の定期貯金を解約した行為の民事責任

兄が、母を郵貯銀行に連れていき、母の貯金口座から900万円を出金したうえで、うち500万円を姪名義の定期貯金にしたことについて、母の一応の承諾があったものと考えられます。

ただ、母には、姪に贈与する意図はなく、預け入れ限度額を超える額について、姪名義の口座に移すだけの意図だったものと考えられます。

姪名義の通帳(おそらく印鑑も)を兄が母に渡したということから見ても、母は姪名義であっても自分のものという考えであったのであり、それを認めたからこそ、兄は母に通帳を渡したのでしょう。

⑴ 1つ目の考え方

法的には、母が姪に対して500万円の債権を有しており、姪が郵貯銀行に対して500万円の定期貯金債権を有していることになる、というのが1つ目の考え方です。

姪の定期貯金の原資は母のものであったとしても、姪の定期貯金を、母に依頼された相談者が、姪に無断で解約する行為は、姪の財産権を侵害する不法行為になります。

姪らがそれに気づいて、姪から500万円及び年利5パーセントの遅延損害金の支払を求められた場合、相談者は、それらの支払義務を負います。

⑵ 2つ目の考え方

母が相談者を使ったにせよ、姪名義の貯金を引き出させたのは、実質的には姪名義の貯金は自分のものであるということを前提にしての行為だったと思われます。

したがって、姪の名義にしても、それは単に名義を借用しただけであり、財産(金500万円)を移転する意思はなかったということで対応することも可能だというのが、2つ目の考え方です。

この場合、相談者は、母の財産を母に頼まれて解約し、送金したに過ぎないため、不法行為責任を負わないということになります。

 

4 遺留分侵害額請求について 

⑴ 遺留分侵害額請求をするとよいでしょう

姪名義の定期貯金を解約して母の口座に送金された500万円は、母の遺産の一部になります。

また、母は、兄に対し、400万円の債権を有していると考えられ、これも母の遺産の一部になっています。

以上を考慮の上、母の遺産(全てのプラスの財産から全てのマイナスの財産を引いたもの)である1900万円の6分の1が、相談者の遺留分であるということになります。

その前提で遺留分侵害額請求をするとよいでしょう。

⑵ 兄や姪が様々な主張をしてきたときの対応

もし、兄が、母の口座に送金された500万円は、母の遺産ではなく姪のものだと主張したり、姪が、相談者に対し、500万円の損害賠償請求をしてきた場合には、弁護士に相談してください。

(弁護士 武田和也)

 

 

 

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