被相続人以外の名義になっている財産を相続財産に含めることはできるのか?
(東京高判平成21年4月16日)
【ケース】
被相続人の妻名義になっていた被相続人の財産について被相続人の相続財産に含めることなく相続税の申告をしていた事例で、被相続人の財産であるといえるかが問題になった。
【裁判所の判断】
裁判所は、以下のとおり判断し、被相続人の財産であると認めた。
財産の帰属の判定において、一般的には、当該財産の名義が誰であるかは重要な一要素となりうるものではあるが、我が国においては、夫が自己の財産を、自己の扶養する妻名義の預金等の形態で保有することも珍しいことではないというのが公知の事実であるから、妻名義預金等の帰属の判定において、それが妻名義であることの一事をもって妻の所有であると断ずることはできず、諸般の事情を総合的に考慮してこれを決する必要がある。
被相続人以外の者の名義となっていた財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かは、当該財産又はその購入原資の出捐者、当該財産の管理及び運用の状況、当該財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係、当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して判断するのが相当である。 被相続人の妻名義の預金等については、妻は被相続人名義の有価証券や預金も主導的な立場で管理、運用をしていたことが認められるところ夫婦間においては妻が夫の財産を管理、運用することがさほど不自然なことではないこと、被相続人は自分の死後の妻の生活について金銭面の心配をして自己に帰属する財産を妻名義にしておこうと考えたとしてもあながち不自然とはいいがたいこと、被相続人から妻への土地建物の生前贈与については贈与契約書を作成し税務署長に贈与税の申告書を提出していたのとは異なり預金等についてはそのような手続がとられていないことなどを考え併せると、妻が自ら管理、運用をしていた事実があったとしても、妻名義の預金等は被相続人の相続開始時にはなお、被相続人に帰属していた相続財産であったと認めるのが相当である。
【弁護士コメント】
上記裁判例のように被相続人の相続財産であると認める裁判例もありますが、事案によっては反対に、被相続人の相続財産であると認められない裁判例も存在します。
相続財産と判断されるか否かの判断は各事案によって異なりますので注意が必要です。