【質問の要旨】
先日、母が亡くなったため、母の通帳を確認したところ、100万円以上あったはずの口座残高が解約されて、400円になっていた。
母には10年以上成年後見人が付いていたので、その後見人が使い込みをしたのではないか?
【回答】
1.まずは証拠を取り寄せることが必要
①金融機関の取引履歴の取寄せ
後見人の使い込みがあったのかどうかが問題となります。
そのようなことがあったのかどうかを確認するために、事実関係を調べる必要があります。
そのため、相談者としては、まず、相続人として亡くなった母の預金口座の取引履歴を10年分取り寄せることができます。
取引履歴を見ることで、解約された100万円の預金以外に使い込みと見られる金銭の移動がないか確認をすることが必要です。
履歴の取寄せによって、使い込みの有無が確認できるだけではなく、取寄せた履歴が将来の交渉や裁判をする場合の証拠として役立ちます。
②成年後見人作成の家庭裁判所への報告書
また、成年後見人は年に1回程度、家庭裁判所に職務内容について報告書を作成し、提出します。
前記報告書については、家庭裁判所で閲覧・謄写申請をして、裁判官の許可が得られれば、閲覧・謄写が可能となります。
これも使い込みがあったかどうかの極めて重要な判断材料となりますので、取り寄せをされるといいでしょう。
③成年後見人への聞き取り
以上の①及び②の証拠の取り寄せをした上で、最後に、成年後見人本人に説明を求めるということも考えられます。
成年後見人は、被後見人の財産を管理するだけでなく、本人の生活のために財産処分をする権限や、施設入所のための費用をだす権限などがあるため、そのような正当な理由があったのかどうかについて説明を求めるとよいでしょう。
なお、この際、後見人の話内容を録音されておくと、将来の証拠として役立つ場合があります。
2.成年後見人の責任
①民事上の責任追及
もし、成年後見人が、母の財産を自分のために使い込んでいたような場合は、不法行為が成立するため、母の成年後見人に対する損害賠償請求権を相談者が相続し、責任追及をするということになります。
②刑事上の責任
成年後見人が使い込みをすると、刑事上、業務上横領罪などの犯罪が成立する可能性があります。
そのため、相談者としては、警察に相談をするということも考えられます。
ただ、警察としては、証拠がない限り動いてくれないという可能性もあります。
相談者としては、民事上の責任追及の方を中心的に検討した方がよいでしょう。