【質問の要旨】
被相続人:叔父(単身、ご存命だが既に余命宣告を受けている)
法定相続人:相談者の母・母の弟(2人とも相続放棄したいとの意向)
相続財産:自宅を売却したときの多額の現金化された資産、
銀行の預金として少額の現金、株を少し保有
その他:・法定相続人が相続放棄をする予定なので、叔父から姪である相談者に相続したいと言われた。
・叔父は自筆遺言書でも良いので作成したいと言っているが、内容に不備があった場合のことを考えて心配に思っている。
■質問(相続税等に関して)
①法定相続人以外が相続した場合、相続税の税率は変わるか。
②もし相続人が増えた場合、相続財産を受け取ったもの者は、
一時所得があるとみなされ翌年以降の税金や国民健康保険の金額が変わってくるか。
③土地の売却に関しては、まだ精算をしていない。
叔父が来年度の確定申告をする前と後で相続税は変わってくるか。
※土地を売却し、精算前の今の叔父の資産は4000万円前後
■質問(弁護士費用等に関して)
以下依頼した場合の費用を教えてほしい。
①遺言書作成のアドバイスのみ聞く場合
②遺言書を作成した後に確認してもらう場合
③遺産分割協議書の作成を依頼した場合
④上記のような相談を何度かした場合
【回答の要旨】
今回は相続税に関する質問がメインの相談です。
相続税の分野は弁護士の専門ではありませんので、分かる限度でお答えします。
正確な回答は、税の専門家である税理士に相談されることをおすすめします。
1、相続税が課税されないかもしれない。
ご相談のケースでは、相続人が2人ですので、相続税の基礎控除額は4200万円です。
質問からは遺産総額が不明ですが、もし上記額以下なら相続税は課税されません。
2、法定相続人以外は税額は20%アップ
もし、相続税がかかるとすれば、相談者は法定相続人ではありませんので、税が2割加算されます。
3、相続税は以後の所得税や社会保険料に影響しない。
相続税は独自に徴収されます。
所得税の課税対象ではないので、翌年以降の確定申告の際に所得として換算する必要はありません。
同様に保険料にも影響しません。
4、叔父が土地を譲渡税の申告をしない場合には、その税額が債務になる。
叔父が土地を譲渡し、譲渡益が出た場合、その益に対して約20%が課税されます。
もし、叔父がこの譲渡益を申告していなかった場合には、その税額は叔父の遺産の債務として扱われます。
そのため、法定相続人あるいはその包括受遺者(全部の遺産を遺贈された人)は申告する義務があります。
なお、生前に叔父がこの譲渡益課税を支払っていた場合にはその分が遺産から支払いされます。
従って、申告をしていなくとも、確定申告の前後で相続税の金額に変わりはありません。
【弁護士費用等に関して】
1、遺言書作成のアドバイスのみ聞く場合
この場合には法律相談になりますので、1時間で弁護士費用(法律相談料)は1万1000円(税込)になります。
なお、30分で5500円という法律事務所もありますが、わかりやすい回答を期待するなら1時間程度かかると考えていいでしょう。
2、遺言書を作成した後に確認してもらう場合
自分で作った遺言書を見てもらう場合にも法律相談になります。金額は前項に記載したとおりです。
3、遺産分割協議書の作成を依頼した場合
この場合の弁護士作業の中心は書面作成です。
しかし、案件にふさわしい書面を作成をするためには、詳しく事情を聞く必要がありますし、場合によるとそれなりの調査が必要になります。
又、後々修正することを考えると、15万円から30万円程度の費用を考えておくといいでしょう。
4.上記のような相談を何度かした場合
1回あたり1時間とすると、3回した場合には3倍の金額になります。
複数回したからと言って金額が安くなることはありません。
【題名】
相続に関する質問と見積のお願い
【ご質問内容】
叔父の相続についての相談です。
叔父は単身で 叔父には私の母と 弟の二人の法定相続人がいますが
事情があり二人が相続を放棄したいと言っております。
叔父から姪である私に相続したいと話がありました。
叔父には借金はなく、先日自宅の売却を行い、すでに現金化されたものが大きな資産としてあります。あとは銀行口座に多少の現金と 株を少し保有しているようです。
法定相続人ではないので遺言書を作成したいと申しておりますが
自筆遺言書でいいと言っていますが内容に不備があると相続そのものがなりたたなくなってしまうという心配を私はもっています。
そこで下記の件について教えていただけますでしょうか。
1.法定相続人以外が相続した時の税率に違いはあるか。
2.相続人を1人想定していますが 相続税を考慮すると多い方がいいと思いますが
そののち受け取った者にも一時所得があったとみなされ翌年以降の税金や国民保険などの金額など変わってくるものはありますか。
3.土地の売却を行いましたが まだ申告はしていないので 精算をしていない形になります。(売却金額から諸経費などを引いての税申告をしていない)
この場合 叔父が 来年度になってからの確定申告をする前と後での 相続税などはちがってきますか。
4.いまの所叔父の資産として4000万前後かと思います。(上記売却の申告前)
上記相続関係の手続きのお願いをすることになった場合の価格を教えていただけますでしょうか。
〇遺言書作成のアドバイスのみ
〇遺言書作成後の確認
〇遺産分割協議書の作成依頼をした場合
〇こういった相談を何度かさせていただいた場合。
叔父はすでに余命宣告を受けている状態です。
以上よろしくお願いします。
【ニックネーム】
なかい
【回答の詳細】
第1.相続税等について
1.相続税の支払いが必要になるか?
今回のケースでは、法定相続人が2人おりますので、基礎控除額は次の計算式で算定される4200万円ということになります。
計算式:控除基礎額3000万円+600万円×法定相続人数2人=4200万円
今回は法定相続人2人が相続放棄をするとのことですが、相続放棄をしたとしても、基礎控除においては法定相続人として計算されるため金額は変わりません。
叔父の現在の資産は4000万円ほどという前提であれば、相続税が課税されません。
ただし、相続税の課税される財産の中には、亡くなった時点で被相続人の持っていた財産のほか、相続前3年間(※1参照)に生前贈与された財産や保険金など法律上は相続財産とならないものも含まれます。
※令和6年1月1日以降の贈与については、贈与は相続開始時点から7年遡るようになりますのでご注意ください。
なお、正確なことを知るためには、実際に相続が発生した時点で税理士に税務相談をされ、相続税の申告が必要であるかをお聞きになるといいでしょう。
2.法定相続人以外が相続した時の税率に違いはあるか
結論として、全体としての税率に違いはありません。
相続税の計算は、概ね以下の手順で行われます。
①遺産総額を算出
②遺産総額から基礎控除(3000万+600万×法定相続人)を引く
③法定相続人が法定相続分で相続をしたと仮定して、各人の取得金額に税率をかけて相続税額総額を算出
④ ③の金額に取得割合を按分して算出相続税額を算出
⑤配偶者や子供以外などであれば2割加算
したがって兄弟が相続する場合も2割加算になります。
⑥ ④の金額から税額控除(贈与税額控除、配偶者の税額軽減等)
上記のとおり、税率を使うのは③の計算過程ですが、法定相続人が法定相続分で取得したと仮定した上で、相続税総額の計算を行うため、相続税総額が変わったりするということはありません。
ただし、2割加算の対象になる可能性があります。
3.今回のケースは2割加算の対象になる
上記のとおり、法定相続人以外が財産を取得しても相続税総額に違いはありません。
ただし、上記の⑤の2割加算の適用が問題となります。
2割加算というのは、配偶者や一親等の血族、第1順位(子)の代襲相続人以外の者が財産を取得した場合、税額が2割加算されることです。
今回のケースは、被相続人の姪が財産を取得するため、⑤の段階で税額が2割加算されることになります。
4.翌年以降の税金や保険料への影響
「そののち受け取った者にも一時所得があったとみなされ翌年以降の税金や国民保険などの金額など変わってくるものはありますか。」という質問については、既に相続税で課税されていますので、将来、更に一時所得として所得税がかかることはありませんし、国民健康保険料にも影響はありません。
5.叔父の譲渡所得税について
土地を売却した場合で譲渡益が出た場合、譲渡所得税の申告が必要になります。
もし、叔父に譲渡所得税の申告が必要なのに、申告をせずに亡くなってしまった場合で、叔父の生前の所得について、代わりに申告をする必要がないか、検討が必要になります。(これを準確定申告といいます)
通常であれば、相続人が準確定申告をします。
ただし、国税庁によると、民法上の相続人がいない場合は、包括受遺者(全遺産の遺贈を受けた者)が申告をするとしています。
そのため、相談者が遺言書で包括遺贈をされたという場合、死亡から4か月以内に相続人が準確定申告をする必要があります。
なお、譲渡所得税の納税義務については、相続が発生した時点で、被相続人の債務として存在していたものであるため、相続税との関係では、債務控除として、遺産総額から差し引かれることになります。
(参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm)
第2.弁護士費用について
この質問の回答は、《回答の要旨》に記載したとおりです。
(弁護士 山本こずえ)
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