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実例Q&A

被相続人の土地上に建物を建てて使っていた場合の特別受益【Q&A817】

2023年5月19日

【質問の要旨】

母親がなくなり相続が発生し、相談者が母親名義の畑地(農地転用はせず畑地と宅地に分割されている)に9年前に建て、使用していた工房の立ち退きと9年間の特別受益の支払いを弟から要求された。

 

被相続人:母親(土地の名義人、10年前より認知症であった)

相続人:相談者、弟

相談者:母親の面倒を見て、畑地を管理していた。

 

・相談者が使用していた、畑地上の工房の立ち退きと特別受益の支払いは正当なものか。

・上記が正当であれば宅地評価額の9年間分の特別受益が発生するのか。

 

 

1.明け渡しに応じる義務はない

相談者は弟から立ち退き要求をされていますが、応じる必要はありません。

相談者が工房を建てている土地部分については、亡くなった母と相談者との間で無償で土地を利用する契約が締結されているとみることができます。(これを「使用貸借契約」といいます)

母が亡くなった場合、母の貸主としての地位が相続されますので、現在は弟と相談者の間で使用貸借契約が成立している状態です。

このような契約は、少なくとも遺産分割が終了するまでは続きます。

2.更地価格の1~3割程度が特別受益となる可能性がある

「特別受益」というのは、相続分の前渡しと考えられています。

前述のとおり、亡くなった母と相談者との間では使用貸借契約が締結されているといえます。

そうすると、相談者としては使用貸借権相当額分の利益を受けているといえますが、その一方で、母の遺産の評価としては、土地から使用貸借権相当額を差し引いた金額へと減っているため、遺産の前渡しがされたものといえます。

したがって、使用貸借権相当額が特別受益にあたるといえます。

3.持ち戻し免除について

特別受益にあたる場合、特別受益を相続財産に加えた上で(「持ち戻し」といいます)、特別受益を受けた人の相続分からは特別受益を差し引いて相続分を計算します。

ただし、このような「持ち戻し」について、亡くなった人が免除することができます。

今回のケースで、母の面倒を見る代わりに、土地上に建物を建て、土地を無償で使ったということがいえるのであれば、母の扶養と土地の使用は対価関係にあり、持ち戻し免除の黙示の意思表示が認められると主張することも考えられます。

(ただし、このような主張が認められるかはケースバイケースです。)

 

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