【ご質問内容】
10月末に祖母が亡くなり、疎遠であった叔父家族と関わる機会が増えました。
父と叔父は非常に仲が悪く、話し合いもまともに進みません。
祖母は10年ほど前から認知症を患い、一人で生活することができなくなったため、広島から実家に引き取り介護をしていました。
叔父家族とはほとんど連絡が取れず、一週間祖母を連れ帰っただけで、あとの介護や施設入所などはこちらですべて行わなければなりませんでした。
祖母が亡くなったため遺産相続問題が出て来たわけですが、叔父家族は半々の分割を主張しています。
法律的にはそうなるであろうことは理解していますが、祖母の介護に手を貸してくれなかったこと。また、祖母が生前、叔父に貴金属を勝手に売り払われた、借金を払わされた、新築の費用を出させられたという話をよくしていました。
祖母を引き取ったときには蓄えもなく、心情的に納得がいきません。この辺りが何とかならないかと思っています。
また、祖母の回帰法要や納骨にかかるお金は折半となっていますが、すべてこちらで手配して立て替える形になるので経済的にしんどい状態です。
遺産相続が終わった後に連絡が取れなくなるかもしれないとも危惧しています。
お知恵をお貸しいただければ幸いです。
【ニックネーム】
達也
【回答】
1 前提
祖父は既に死亡しており、祖母の相続に関して、相続人は父と叔父だけだとします。
2 介護して、金銭の支払いを免れたときは特別寄与になる
被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与をした相続人がいる場合は、遺産分割の前に、その相続人に遺産からある程度の財産を与えるという寄与分の制度があります。
本件で言えば、父が被相続人である祖母を介護したことにより、被相続人の財産の維持に特別の寄与をしたといえるときは、父には寄与分が認められ、法定相続分より多く遺産の分配を受けることができます。
ただ、特別の寄与があったといえるためには、本来なら介護業者に依頼し、介護職員を派遣してもらって、その料金を支払わないといけないところ、父母が介護をしたことによって、その料金の支払を免れたというような場合であり、そのようなときに特別の寄与と認められます。
単なる施設入所の手続代行程度では、特別の寄与があったとは認められないでしょう。
3 貴金属売却、借金の支払、新築費用の負担について
貴金属の売却については、叔父に勝手にされた場合、祖母は叔父に対して損害賠償請求ができます。
この権利は、祖母の遺産になりますので、父が祖母の遺産を相続した場合には、叔父にこの賠償請求をすることができます。
借金を払わされたことや、新築費用を負担させられたことについては、祖母が同意してなされたものであれば、叔父が祖母から生前に遺産の一部を受取ったとれる場合があります。
このように生前に被相続人から財産をもらうのを特別受益と言い、遺産分割に際しては、そのもらった財産を遺産に組み入れて、遺産分配をすることになります。
その際、叔父が生前にもらった分は遺産分配での取り分として計算されます。
ただし、そのような生前の取り込み分があったかという点は、父の方が証明する必要があります。
そのため、被相続人のメモや日記等のようなハッキリとした証拠を見つけておく必要があります。
4 回忌法要等の立替費用の捻出方法
遺産に預貯金がある場合、遺産分割前に、相続人である父が単独で、相続開始時の預貯金×1/3×1/2(ただし、150万円を上限とする)を出金することができるという制度があります(民法909条の2)。
回忌法要等の立替費用の捻出に困っている場合は、この制度を利用する方法があります。
なお、この場合、金融機関に対し、民法909条の2に基づいて出金することを通知する必要があります。
5 遺産相続後に連絡が取れないとき
遺産分割協議が整ったにもかかわらず、その内容が実現されないまま叔父と連絡が取れなくなった場合は、訴訟対応が必要になると思われますので、弁護士にご相談ください。
(弁護士 武田和也)