【質問の要旨】
【題名】
遺産分割協議
【ご質問内容】
兄弟3人です。認知症の母が亡くなり実家の土地を取得したいと考えて遺産分割協議を進めようとしています。
通帳は姉が管理していたので、見せてというも見せなかった経緯があります。
弁護士を立てて調べたところ、姉が生前から50万円づつ引き出しており、残高が一回分の50万不足していました。
勝手に出金していたこと、不足分は母の遺産に組み込む様に主張していますが母用に高額なクリームを購入したと言い出しています。
土地の評価も不動産により1.8倍程、乖離が大きいので調停が難航しています。
さらに兄は入居時の契約金支払いや亡き父の墓石を建立した、と主張してきました。
土地を取得したい私に払わせようとしてきています。
土地評価で折り合いがつかない場合は審判に行くようですがどう判断されるかを、知りたいです。
弁護士は相手方の誹謗や細かい主張にあまり真摯でなく数字での折り合いを私に聞いてくるので少々頼りない感じがしています。
土地は固定資産税額で約1030万の土地で、不動産評価は1080万、1400万、1700万、1,880万です。
【ニックネーム】
ミュー
【回答】
1.現在の状況
現在家庭裁判所の調停で話し合い中。
「生前のお金の引き出し」について意見が食い違っており、調停がまとまらない可能性がある。
2. 争いある部分は地方裁判所の訴訟で決着をつける
普通は遺産分割調停がまとまらない場合は、調停は不調で終了し、家庭裁判所で審判で遺産分割をする。
しかし、家庭裁判所は「はっきり遺産とわかっているもの」しか扱わない。
今回の質問のように、引き出されたお金が遺産かどうかで争いがある場合は、その点について、別途、地方裁判所で訴訟する必要がある。
3.今回の質問のような場合の今後の手続きの流れ
1)家庭裁判所の調停は「不調」にはせず、いったん「なさず」という形で終了する。
2)その後、相談者が地方裁判所に「出金されたお金は遺産だ」という裁判を起こす。
3)裁判で「それが遺産かどうか」が決まったら、もう一度家庭裁判所に遺産分割の手続きを申し立てる。
4)裁判で遺産かどうかが確定すれば、その内容を反映させた遺産分割調停を申し立てる。
※このような流れになるため、全体の手続きが 2~3年、あるいはそれ以上かかることもあります。
4.すでに「遺産」と確定しているものだけで先に手続きする方法もある
明らかに遺産とわかっている部分(不動産や残りの預金など)だけで先に手続きを進めることも可能ですが、相続人全員の同意が必要です。
5. 父のお墓の費用(墓石)は遺産とは別
お墓の費用は「祭祀財産」であり、遺産ではありません。
そのため、遺産分割審判で裁判所は判断しません。
なお、通常はこのお墓の費用は、お墓を引き継ぐ人(祭祀承継者)が負担する。
6.入居時の契約金
遺産にどう関連するかが不明ですが、遺産とは関係ない可能性が高く、審判の対象にはならない可能性が高いです。
(弁護士 大澤 龍司)