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【相続判例散策】特別受益分はどこまで遺留分減殺の対象になるのか?最高裁平成10年3月24日(平成9年(オ)第2117号)

2018年11月26日

  1. 特別受益分はどこまで遺留分減殺の対象になるのか?

最高裁平成10年3月24日(平成9年(オ)第2117号)

 

【ケース】

亡Aの相続人であり遺留分権利者であるBらが、Aからその生前に土地の贈与を受けたCらに対し、遺留分減殺請求権を行使し、Cらに帰属した土地の持ち分についての移転登記手続を求めた事案。

原審ではAの財産が減少するおそれはなく、遺留分権利者であるBらに損害を加えることを知ってされた贈与ではないとして、遺留分減殺の対象にならないとの判決であった。

 

【裁判所の判断】

民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、民法1030条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となるものと解するのが相当である。

けだし、民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、すべて民法1044条、903条の規定により遺留分算定の基礎となる財産に含まれるところ、右贈与のうち民法1030条の定める要件を満たさないものが遺留分減殺の対象とならないとすると、遺留分を侵害された相続人が存在するにもかかわらず、減殺の対象となるべき遺贈、贈与がないために右の者が遺留分相当額を確保できないことが起こり得るが、このことは遺留分制度の趣旨を没却するものというべきであるからである。

【ケース】

亡Aの相続人であり遺留分権利者であるBらが、Aからその生前に土地の贈与を受けたCらに対し、遺留分減殺請求権を行使し、Cらに帰属した土地の持ち分についての移転登記手続を求めた事案。
原審ではAの財産が減少するおそれはなく、遺留分権利者であるBらに損害を加えることを知ってされた贈与ではないとして、遺留分減殺の対象にならないとの判決であった。

【裁判所の判断】

民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、民法1030条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となるものと解するのが相当である
けだし、民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、すべて民法1044条、903条の規定により遺留分算定の基礎となる財産に含まれるところ、右贈与のうち民法1030条の定める要件を満たさないものが遺留分減殺の対象とならないとすると、遺留分を侵害された相続人が存在するにもかかわらず、減殺の対象となるべき遺贈、贈与がないために右の者が遺留分相当額を確保できないことが起こり得るが、このことは遺留分制度の趣旨を没却するものというべきであるからである。

【弁護士のコメント】

被相続人が遺言で相続人の一人に多くの財産を遺贈した場合に、財産を相続できなかった相続人は、遺留分減殺請求権を行使し、一定の財産を受け取ることができます。
それと同様に、遺言でなく生前であっても、被相続人が特定の人物に多額の贈与をし、相続時には財産がなかったというようなケースでも、財産を相続できなかった相続人は、遺留分減請求が可能な場合があります。
遺留分減殺の際には、相続開始時に被相続人が有したプラスの財産に、被相続人が贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して、対象財産を算定します(民法1029条)。
このとき加算される贈与の範囲は、条文上は、次のとおりです。
① 相続開始前の1年間になされた贈与(民法1030条前段)
② 遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与(民法1030条後段)
③ 不相当な対価でなされた有償処分(民法1039条)
この判例では、相続人の一人に対する贈与である特別受益の場合には、相続開始1年前か否かを問わず、また、損害を加えることの認識の有無を問わず、すべての贈与分が遺留分減殺の計算の際の基礎財産に加算されるという判断がなされました。
これは、相続制度が遺族の生活保障という機能を有していることに鑑み、相続人の公平と保護を図ろうとの趣旨で遺留分減殺請求権が認められていることから、特別受益を期間や内容で限定してしまうと、遺留分制度の趣旨を没却するという理由でなされた判断です
特別受益制度と遺留分制度の性質を考慮した判断で、妥当なものであるといえます。

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