【質問の要旨】
・母は生前、墓の相続も含めてすべてを次男に任せると言っており、次男が母の面倒を診ていた
・母が亡くなった際、次男から相続財産はほとんど残っていなかったと聞いたため、遺産分割協議をしなかった
・しかし、次男は位牌を相談者に押し付け、母の墓の維持費まで請求してくる
・相談者としては、次男が墓の管理をしないことや、遺産分割のことについて納得がいかないが、何か解決方法はあるか
【回答の要旨】
・相続財産については調査が必要。
次男との交渉がまとまらない場合は、遺産分割調停を申立てて、遺産分割をすることになる
・葬儀代の負担については、喪主が支払いをするが、出席した相続人がいる場合には相続分に応じて負担する解決をすることも多い
・お墓の維持費や位牌の管理、葬儀以外の法要の費用などについては、相続費用とはならないため、喪主の負担となる
母が亡くなった際に遺産分配が全くされませんでした。理由は最期を看取った次男が言うに、晩年の介護に費用がかかったため残らなかったからとのこと。
それを信じその際は納得し、葬式代も私が全額払いました。しかし49日が終わった途端、位牌が急に家に着払いで届きました。母の住んでいた家を建て替え、そこに次男の娘夫婦の家を建てるからとのこと。仏壇もなくすので位牌が邪魔とのことでした。
さらに、母のお墓の維持費の請求もうちに届くようになりました。突っぱねていたら、墓じまいをするからと費用の請求がきました。
もはや不信感しかありません。
兄弟とは言え、我が家から取れるだけお金を取ろうとしている卑しい人間にしか思えません。
気持ち的に納得できないのは、母は生前、すべて(墓を相続するのも含め)次男に任せたから安心してくれと言っていました。だから遺産はないと思うと言われていたので納得でした。
しかし墓の権利をこちらに投げてきました。話が違うと言ったら、うちにはお金がないからと一点張りです。ちなみに過去に私が立て替えた次男の借金も返済されませんでした。この件は納得済みですが。
甘やかした私が愚かなんでしょうが、母が死んだ今、すべて明らかにしたいという思いです。方法はありますか?
(ユキノリ)
※敬称略とさせていただきます。
【回答】
1 相続財産については調査が必要
今回の相談では、母の遺産分割がされていません。
次男によれば、相続財産が残っていなかったということですが、少なくとも母が亡くなった当時、その居住していた建物が残っていたことが前提になっています。
その建物が母の所有であれば、その分割が必要になります。
又、最後をみとった次男の話では、遺産はなかったとのことですが、念のために金融機関から取引履歴を取り寄せし、次男による不正な出金があるかどうかを確認しておくといいでしょう。
たとえば、母の面倒をみていた次男が介護に必要な分よりも多く引き出しているということも考えられます。
相談者としては、自宅不動産の登記簿謄本の取得や、金融機関に照会をかけて取引履歴を取得する等の調査も必要となります。
(なお、金融機関の調査については、【相続Q&A749】 を参照されるといいでしょう。
もし、他にも相続財産が残っていることや次男の使い込みなどが判明すれば、まずは交渉をすることになります。
次男との交渉がまとまらない場合は、遺産分割調停を申立てて、遺産分割をすることになります。
判明した遺産の額が大きい場合には、弁護士に依頼して、調査や交渉等を任せることも考えられるといいでしょう。
2 葬儀代やお墓の維持費、位牌について
今回の相談では、相談者が葬儀代を全額支払っていますが、遺産分割調停を申し立てた場合、どのような主張ができるでしょうか
葬儀代の負担については、喪主が支払いをしますが、出席した相続人がいる場合には相続分に応じて負担する解決をすることも多いです。
今回の相談でも、相談者と次男の双方が出席されているため、折半にする主張が考えられます。
一方、お墓の維持費や位牌の管理、葬儀以外の法要の費用などについては、相続費用とはなりませんので、喪主の負担となります。
なお、質問では、母が墓を相続する分を含めて次男に任せたという点で、誰が喪主になるかに問題があれば、家庭裁判所に喪主を定める審判を申し立てるといいでしょう。
(弁護士 山本こずえ)