【相続判例散策】
遺産分割協議で決まった義務を実行しないとき、分割協議を無効にできるか?
(東京高裁 昭和52年8月17日決定)
【結論:分割協議の無効ではなく、債務不履行で損害賠償をすることになる】
(最高裁判所 平成元年2月9日判決。
なお、東京高裁 昭和52年8月17日決定も同様の結論です)
【ケース】
遺産分割協議書で、相続人のうちの一人がお母さんの面倒を見るということになりました。
ところが、その相続人がその義務を実行しなかったため、他の相続人が母親の面倒を見るように求めました。
しかし、それでも母親の面倒をよく見なかったとき、他の相続人はその遺産分割協議を無効にできるでしょうか?
【裁判所の判断】
最高裁判所は、遺産分割協議の解除はできないと判断しました。
遺産分割協議はその性質上、遺産分割協議により終了しているため、債務不履行により解除できないと結論つけています。
遺産分割協議は多くの財産を多数の法定相続人に配分するものですので、
それが無効にすると、
相続人が遺産分割協議の結果もらった不動産を売却していたような場合はどうするのか、
あるいは相続人がもらった金を使い切ったようなときは・・・等の 非常にややこしい法律的な問題がいろいろと出てくることも配慮して、
遺産分割協議の無効を認めなかったものです。
ただ、お母さんは何もできないというのではなく、定められた義務を果たさない相続人に対して損害賠償できることになります。