【質問の要旨】
・3人兄弟
・両親は健在
・遺産のうち、現金はほとんどないが今後価値が上がりそうな場所に土地がある
・父が亡くなった際に、一番目の兄弟に相続や遺留分を受け取ることができないようするにはどう手続すればいいか
【回答の要旨】
・遺留分を受け取ることができないようにすることはできない
・遺留分の権利は今回の民法改正によって金銭請求権となった
・遺言により、相続分をゼロにすることで、兄が土地を相続することを防止することは可能
相続について相談させてください。
私には兄弟が3人おり、二番目が両親に代わって問い合わせしています。
一番目が結婚する相手が、信用できそうになく、今後のトラブルを心配して前もって手を打とうと思っています。
両親の遺産は現金はほとんどないのですが、土地が少しあり、今後価値が上がりそうな場所です。
父親が亡くなった時一番目が絶対に相続や遺留分を受け取ることができないようにしたいのですが、どう手続きをしていればよろしいでしょうか。
とにかく、一番目には何一つ受け取る分がないようにしたいです。
どうぞご教授のほどよろしくお願い致します。
(H)
【回答】
1 遺留分を受け取ることができないようにすることはできません
遺言書で兄の取り分がゼロになっている場合、兄がそれを知って1年間放置すると、兄は何ももらえないことになります。
但し、兄が、自分が遺産をもらえないことが不服であれば、遺産が欲しいという内容の通り、本来の相続分の半分をもらうことができます(これを遺留分侵害額請求といいます。)。
遺留分の制度は、相続人の生活など、最低限の利益を確保するものですから、被相続人の意思によっても、遺留分の権利をなくすことができないのが原則です。
なお、法律では廃除(民法892条)という手続きがあります。これは、被相続人に対して虐待などをした者を、被相続人の意思によって相続から除外しようとする制度です。兄の結婚する相手が信用できないという理由では、廃除の制度を使うことはできません。
もっとも、相続開始前10年以内に、父から兄に対して、遺留分額を上回るだけの特別受益がある場合には、結果的に、遺留分がなくなることがあります(特別受益についてはQ&A689を参照)。
2 今後値上がりしそうな土地を兄に受け取らせないことは可能
上記の通り、兄の遺留分をなくすことは困難です。
もっとも、遺留分の権利は、今回の民法改正によって金銭請求権となりました。
原則として、金銭でもって遺留分相当額を支払うことになります。
したがって、遺言により、相続分をゼロにすることで、兄が土地を相続することを防止することは可能です。
また、遺留分の額は、相続開始時の土地の価額を基準に計算されますので、父の死亡後に土地が値上がりしたとしても、すでに確定した遺留分の額が増加することはありません。
相談者が、金銭での解決を望まれない場合には、父親の遺言により、遺留分額に相当する遺産を遺贈するという方法もあります。その場合には、兄の遺留分は確保されますから、それを超えて遺留分をもらうことはできません。
(弁護士 山本こずえ)