【質問の要旨】
【質問の要旨】
・相続放棄について
・自分は、父と祖父の共有名義の土地及び建物を相続し、売却したい。
・祖父には前妻と、前妻との間の子がいた。
・前妻と、前妻の子は、相続放棄をしてくれると言っている。
・妹は、家裁に祖父と父の相続放棄の申請をしたが、祖父の相続については父の単純相続と見なすため、妹には放棄権も相続権もないといわれた。
・法律的にどのような手続きをすればよいか。
・妹は父の分の相続放棄のみでよいか。
・自分は登記の変更は、父の持ち分だけでよいのか。
【回答の要旨】
・ 前妻や妹は、祖父の相続人ではないため、祖父の相続を放棄できない。
・ 祖父の遺産である不動産の持分のうち、その半分を父が相続しており、残りの半分は前妻の子が相続している。
・ 妹が父の相続を放棄する場合、相談者は、不動産の持分の4分の3を取得し、前妻の子が、残りの4分の1を取得 している。
・ 相談者は、前妻の子から、持分を譲渡してもらってから、司法書士に依頼することにより、不動産を相談者の単独名義にできる。
昨年12月に父が亡くなったと連絡を受けました。 父が住んでいた自宅を売却しようと思ったのですが父と私の祖父の共有名義になっており、その祖父には前妻と子がいた事が分かり、すぐに売却ができませんでした。
私と妹は相続放棄期間を延長申請し、戸籍を辿り相手方を見つけ連絡を取れました。
相手方は相続放棄をしてくれると連絡があり、妹とも話し合い妹は放棄する事にしました。妹が父と祖父の相続放棄を申請した所家庭裁判所から連絡があり、祖父の分は父が単純相続したと見なす為私や妹に放棄権も相続権もないとの事でした。 父の分だけでいいのかと聞いたところ法律的な事はお答えできないと言われてしまい、行き詰まっております。
妹は父の分の相続放棄のみでよろしいのでしょうか?
そして私は共有名義の土地を登記変更する際、父の分のみでよろしいのでしょうか?
相手方の相続放棄は現在進行中です。
【ニックネーム】
みずき
【回答】
1 前提として
相談者の祖父が亡くなって3カ月以上経過後に、相談者の父が死亡したものとして回答します。
また、祖父と前妻との間の子は一人であるものとします。
祖父の後妻は、祖父の相続開始時に、離婚又は死亡しているものとします。
父の妻は、父の相続開始時に、離婚又は死亡しているものとします。
父が住んでいた自宅と、その土地については、父と祖父の共有名義(持分1/2ずつ)になっているものとします。
2 祖父の持分のうち、その半分は前妻の子にいく
祖父の相続人は、祖父と前妻との間の子と、相談者の父の2人になります。
祖父の前妻や、相談者の妹は、祖父の相続人ではありませんので、祖父の相続を放棄することはできません。
前妻の子は、祖父の相続を放棄する意向のようですが、相続放棄ができるのは、祖父の死亡を知って3ケ月以内が原則になります。したがって、前妻の子が、祖父が死亡した事実を知ってから3カ月を経過している場合は、現時点で相続を放棄することは困難です。
もっとも、相談者は、戸籍をたどって前妻の子を見つけ、連絡をとったとのことですので、前妻の子は、祖父の死亡の事実を、相談者から連絡をもらうまで知らなかった可能性もあります。
その場合、前妻の子が祖父の死亡を知ってからまだ3カ月を経過していないと思われますので、これから相続を放棄することも可能です。
なお、相談者の妹が試みていたように、相続放棄は家庭裁判所に申述しなければならないことに注意が必要です。
現時点では、祖父の遺産である不動産の持分のうち、その半分を父が相続しており、残りの半分は前妻の子が相続していることになります。
3 父の持分は相談者にいく
父の法定相続人は、相談者と、相談者の妹の2人になります。
しかし、妹は、既に父の相続を放棄する旨を家庭裁判所に申述しているようですので、父の遺産は相談者が単独で相続することになります。
そうすると、結局、相談者は、不動産の持分の4分の3を取得し、前妻の子が、残りの4分の1の持分を取得していることになります。
4 不動産を相談者の単独所有するための手続
⑴ 前妻の子が祖父の相続を放棄できた場合
前妻の子が祖父の相続を放棄することができた場合、前妻の子の持分は、遡って父が相続していたことになり、その父を相談者が単独で相続しているので、父と祖父の共有名義の不動産は、相談者が単独で所有していることになります。
ですから、家庭裁判所にて、前妻の子と妹の相続放棄申述受理証明書を取得したうえで、司法書士に相続登記の依頼をすれば、不動産は相談者の単独所有名義にできます。
⑵ 前妻の子が祖父の相続を放棄できなかった場合
(ⅰ) 父の遺産については、家庭裁判所にて、妹の相続放棄申述受理証明書を取得したうえで、司法書士に相続登記の依頼をすれば、不動産の4分の3が相談者の名義になります。
(ⅱ) 次に、祖父の持分の半分を前妻の子が相続しているので、この分を相談者に譲渡してもらう必要があります。
譲渡する方法としては、贈与と売買が考えられますが、贈与税と売買の譲渡益課税のどちらが負担が少ないかを考慮して、いずれかを選択することになります。
この譲渡の完了後、この譲渡分も相談者に移転登記するように、司法書士に依頼すると、(ⅰ)と併せて、不動産全部が相談者の名義になります。
(弁護士 武田和也)